作成日:2015年12月6日 更新日:2016年2月16日
起業しても準備不足で失敗するケースは意外に多いものです。どうしたら失敗確率を減らし成功可能性を高めることができるのでしょうか?
そこで今回は脱サラ・独立開業・起業創業の成功確率を高める準備の方法と思い立ってから実際に始めるまでの流れについて解説します。実際に起業するまでにじっくりと準備することで失敗する確率も下がっていきます。ぜひお読みください。
脱サラ・独立開業・起業創業の準備方法と流れ:4つのプロセス
みんなの教科書では脱サラ・独立開業・起業創業は4つのプロセスに分けて考えています。テーマと課題・ビジネスアイデア・ビジネスプラン。計画の実行の4つです。
それぞれのプロセスの内容は、下の表の通りです。
プロセス | 内容 |
---|---|
①テーマと課題・ニーズ | どんな分野で事業を起こすか、そしてその分野にはどんな課題やニーズがあるか |
②ビジネスアイデア | 課題やニーズをどのように解決するか |
③ビジネスプラン | ビジネスアイデアを実現する具体的な計画はどのようなものか |
④計画の実行 | なるべく小さく始め、顧客や市場の反応を見て、方法を修正したり、場合によっては撤退したりする |
①まずはここから始めてみよう!起業テーマと課題・ニーズを探す
脱サラ・独立開業・起業創業のプロセスの1つ目は「起業テーマと課題・ニーズを探す」です。これは、どんな分野で事業を起こすかということを決め、そしてその分野にはどんな課題やニーズがあるかということを見つけるというフェーズになります。
起業テーマ
起業テーマとは起業するドメイン(分野や業界)の事です。自分がこれまで働いてきた業界、好きな分野や得意なこと、これから成長していく分野などを考慮して、テーマを設定します。
課題・ニーズ
課題・ニーズとは、社会や顧客が抱える課題や問題、不満や不便なこと、欲しいモノや求めている事です。みんなの教科書では、ビジネスを「社会や顧客が抱える課題やニーズをとらえ問題解決すること」と定義しています。そのため、起業して解決すべき課題・ニーズを見つける必要があります。
課題・ニーズは、普段の生活で自分や周りが困っていることや、社会的な課題、こんな商品・サービスがあったらいいのに・・・等の発想で探していきます。
ビジネスは多くの場合競合との競争になります。そのため、なるべく自分の強みを発揮できる分野や業界、市場全体が伸びている市場で起業した方が有利です。また、アメリカの調査では、起業に失敗した大きな理由のひとつはなんと「ニーズがなかった」という調査があります。起業する前に、きちんと解決すべき社会や顧客の課題・ニーズを把握することが重要です。
テーマと課題・ニーズについての詳細は、別記事に詳しくまとめてあります。あわせてお読みください。
みんなの教科書記事 起業したい方必見!起業する業種の選び方とニーズの探し方
②社会や顧客が抱える課題やニーズを解決する!ビジネスアイデア
起業のプロセスの2つ目は「ビジネスアイデア」です。これは、社会や顧客が抱える課題やニーズをどのように解決するかということを考えるフェーズになります。
みんなの教科書では、ビジネスを「社会や顧客が抱える課題やニーズをとらえ問題解決すること」と定義しています。ビジネスアイデアは、そうした課題やニーズを解決する方法=ソリューションになります。
ビジネスアイデア発想のポイント
ビジネスアイデアを発想するには、以下の3つのポイントがあります。
- 大量の情報をインプットしながら常に考え続ける
- 情報を整理する、メモを取る
- リラックスする、環境を変える
問題意識を持って考え続けることでアイデアが発想される下地ができ、インプットされた大量の情報を整理した後で、頭と体をリラックスした状態におくとアイデアがひらめくことが多いのです。
ビジネスアイデアのブラッシュアップ
ビジネスアイデアは、思いついた段階では単なるジャストアイデアであることが多く、どんどん実現可能性を高くするためにブラッシュアップする必要があります。
ビジネスアイデアをブラッシュアップさせる、最も簡単で有効な方法は、人に話すということです。他人に話してみて、感想や意見をもらって、それをまたビジネスアイデアにフィードバックさせていくことで、単なるジャストアイデアがどんどん実現可能性が高くなっていきます。
ビジネスアイデアを話す相手
ビジネスアイデアを話す相手は、基本的には誰でもOKです。自分以外の人は、自分にはない視点や発想でフィードバックしてくれるからです。ただし、特に効果的なのが、そのビジネスアイデアが対象としている顧客候補です。ビジネスアイデアが解決する課題やニーズは本当にあるのか、そしてその解決法により不満や不便が解消するのか、ヒアリングします。
ヒアリング相手 | 重要度 | ヒアリングすべき内容 |
---|---|---|
ターゲットとしている顧客候補 | ◎ | 商品・サービス、ビジネスについての「顧客」としての感想など |
業界や分野で働く友人、知人 | ◎ | 業界の慣習、規制、競合など |
起業家、経営者、コンサルタント | ◯ | 起業や経営について注意することなど |
先輩、同期、後輩 | ◯ | 独立までのプロセスや、今の会社とのつきあい方など |
友人、知人、家族 | △ | あなたの資質や性格と、起業の進め方など |
ビジネスアイデアは盗まれる?
また、ビジネスアイデアを人に話すと盗まれるという心配をする人がいますが、むしろビジネスアイデアは「頼んでも盗んでくれない」くらいのものと考えておいていいでしょう。ビジネスはアイデアより実行の方が何倍も大事で、かつ難しいからです。アイデアを盗まれる可能性はゼロではないですが、そこを気にするよりもフィードバックを受けてブラッシュアップをする方を優先するべきです。
ビジネスアイデアについての詳細は、別記事に詳しくまとめてあります。あわせてお読みください。
みんなの教科書記事 ビジネスの起業アイデア・ネタの成功確率を高める4つのコツ
みんなの教科書記事 起業や新規事業のアイデア・ネタをひらめくための3つの方法
③ビジネスの設計図であり方向性を確認する羅針盤!ビジネスプラン
起業のプロセスの3つめは、「ビジネスプラン」です。これは、ビジネスアイデアを実現する具体的な計画を立案するフェーズになります。
ビジネスプランは事業計画書とも呼ばれ、一言でいうとビジネスの設計図にあたります。起業する前に、事業の計画を詳細に記したものです。
ビジネスプランの標準的な構成
ビジネスプランの標準的な構成は以下の通りです。
- エグゼクティブサマリー(ビジネスプランの要約)
- 経営理念/ビジョン/ミッション
- ビジネスモデル
- 事業目標
- 自社の商品・サービス/市場・顧客/競合企業
- 技術/マーケティング/資産や設備など経営資源
- 事業戦略
- 経営陣
- 資本計画・EXIT・出資要件
- 財務状況および損益予測
- 具体的な計画はどのようなものか
特に決まりはありませんが、A4ドキュメントで50枚から100枚ぐらいが一般的です。
ビジネスプランの作成の目的
起業するためにビジネスプランを作成する必要があるかというと、実はそんなことはありません。ただし、一般的に起業は、起業家1人の力では実現できないため、様々な人に起業したビジネスの概要を説明し、協力を求めるためにビジネスプランを作成します。
ビジネスプラン作成の目的は、投資家や金融機関から資金調達することです。
ビジネスプラン作成の流れ
ビジネスプランは、以下の様な流れで作成していきます。
- テーマを探す(どんな事業分野で起業するか)
- 課題・ニーズを見つける(選んだテーマにどんな課題や問題・ニーズがあるか)
- ビジネスアイデアを考える(どのように課題・ニーズを解決するか)
- ビジネスモデルを考える
- 事業環境、市場概要の調査を行う
- 3C分析(自社、市場、競合)を行う
- 損益計画と資本計画を立案する
- 将来の事業展開を考える
ビジネスプランのブラッシュアップ
ビジネスプランは、一度作成したらそれで完成ということはほとんどありません。投資家を始めとする沢山の人にプレゼンテーションし、知識や知見の有る人にインタビューし、得られたフィードバックを反映し、ビジネスプランをブラッシュアップしていきます。
様々な仮説検証を繰り返し、何度も何度も書き直していくことで、ビジネスプランの実現可能性が高くなっていきます。
良いビジネスプランとは
起業@みんなの教科書では、こんなビジネスプランが良いと考えています。
- 小さく始めて大きく育てる
個人事業でスタートし、徐々に事業展開していく - 絵に描いた餅にならない
具体的に実現可能性を高くする - サムシングニュー
少しでも新しいビジネスモデルにする - 社会性
世の中を変えたい、よくしたいという思いを伝える
ビジネスプランについての詳細は、別記事に詳しくまとめてあります。あわせてお読みください。
みんなの教科書記事 ビジネスプラン・事業計画書とは?テンプレート・書き方・作り方
④取り返しのつかない失敗を避ける!計画の実行
起業のプロセスの最後は、「計画の実行」です。これは、作成したビジネスプランを実際に実行していくフェーズになります。
これまで、設定したテーマや発見した課題ニーズから、課題やニーズを解決するビジネスアイデアを考え、沢山の情報を収集し仮説をたててビジネスアイデアを実現するためのビジネスプランを作成してきました。
しかし、実際に起業してみると、ビジネスプラン作成時の前提が狂ったり、想定外の事態が起きたりするものです。そのため、起業した後に計画通りにいかないという前提にたち、少なくとも取り返しのつかない失敗だけは避ける必要があります。
取り返しのつかない失敗を避けるポイント
起業計画の実行にあたり、起業@みんなの教科書が考える、取り返しのつかない失敗を避けるポイントは、以下の3点です。
- 会社や勤めをギリギリまで辞めない
- 必要なお金を少なくする、なるべくお金を借りない
- リーンスタートアップ、試してみる・テストする
会社や勤めをギリギリまで辞めない
実際に起業した後は、起業家は生活費などの必要なお金を、起業した事業の利益から得ていくことになります。しかし、特に起業初期はなかなか計画通りにうまくいくことが少ないため、売上や利益が予定通り上がらず、起業家の報酬をしばらく得ることが難しい場合も少なくありません。
そのため、なるべく勤め先から給料をもらいながら起業の準備をすすめ、ギリギリまで会社や勤めを辞めずに収入のあてを確保しておくべきです。
必要なお金を少なくする、なるべくお金を借りない
起業して取り返しのつかない失敗を避けるためには、まずは必要なお金を見直して、失敗した時に失うお金の額を少なくしておくことが重要です。
設備や備品やコストなど本当に必要なのか、何かで代替できないのか、工夫して無くせないのかなどを検討し、本当に買わなければならないとしても、以下の順でコストダウンを検討してきましょう。
- タダでもらえないか
- 借りられないか
- 中古品はないか
- もっと安く買えないか
- 新品を買う
また、起業に必要な資金を調達するにあたっては、できるだけ自己資金を使って外部資金を使わないことが大切です。
- 自己資金
貯金などの自己資金、家族からの援助 - 外部資金
親戚や友人知人からの借り入れ
銀行などの金融機関からの借り入れ
個人投資家やベンチャーキャピタルからの出資
自己資金であれば、起業して失敗したとしても最悪そのお金を失うだけで済みますが、外部資金を調達すると、人間関係を壊したり借金だけ残ったりなどのリスクがあります。
リーンスタートアップ、試してみる・テストする
起業して取り返しのつかない失敗を避けるためには、大きな投資を行う前に、本当にうまくいくかどうか小さく試すことが重要です。
リーンスタートアップとは英語で言うとLean Start-upとなり、直訳すると「ムダの無い起業」という意味になります。最低限の機能を持った商品やサービス・試作品を、顧客や顧客候補に買ったり使ってもらったりして、その反応をフィードバックして商品やサービスの改善や、事業方針の変更、場合によっては撤退や事業の修正を行うことをいいます。
日経ビジネス2012年7月23日号を元に筆者作成
起業は「やってみなければわからない」という側面は確かにあります。ただし、それをそのままにしておくと起業のリスクは小さくなりません。顧客や顧客候補に自分のアイデアや商品・サービスのイメージを話してヒアリングしたり、商品であればサンプルや試作品を実際に作って、使い勝手や意見感想をフィードバックしてもらったりするなどの工夫が有効です。
計画の実行についての詳細は、以下の記事を読んでみてください。
みんなの教科書記事 脱サラ・独立開業・起業創業の失敗リスクを減らす3つのポイント
まとめ
今回は、起業のテーマの設定から起業アイデアの探し方、ビジネスプランの作成から計画の実行まで、一連の流れと準備方法についてまとめています。
- テーマと課題・ニーズ
どんな分野で事業を起こすか、そしてその分野にはどんな課題やニーズがあるか - ビジネスアイデア
課題やニーズをどのように解決するか - ビジネスプラン
ビジネスアイデアを実現する具体的な計画はどのようなものか - 計画と実行
ビジネスアイデアを実現する具体的な計画はどのようなものか
についてまとめています。今回ご紹介した起業までの準備方法と流れをしっかり理解して起業すると成功可能性がグッと高まります。
起業を志す全ての人に、有用な記事になれば幸いです。