作成日:2015年11月13日 更新日:2016年2月8日
起業して成功するために、どのように業種を選び解決する課題を探したら良いのでしょうか?今回は「起業する業種・分野・業界の選び方とそこで解決する課題・ニーズの探し方」を解説します。
ここをしっかり抑えることで、起業して失敗を避け成功する可能性がグッと高まります。ぜひお読みください。
起業の方法と流れは4つのプロセスに分けて考える!
みんなの教科書では、起業を大きく4つのプロセスに分けて考えています。①テーマと課題、②ビジネスアイデア、③ビジネスプラン、④計画の実行の4つです。
起業の4つのプロセスのそれぞれの内容は、下の表のようになっています。
プロセス | 内容 |
---|---|
①テーマと課題・ニーズ | どんな業種・分野・業界で事業を起こすか、そしてその分野にはどんな課題やニーズがあるか |
②ビジネスアイデア | 課題やニーズをどのように解決するか |
③ビジネスプラン | ビジネスアイデアを実現する具体的な計画はどのようなものか |
④計画の実行 | なるべく小さく始め、顧客や市場の反応を見て、方法を修正したり、場合によっては撤退したりする |
今回の記事では、起業テーマと課題・ニーズについて、詳しく解説していきます。
また、みんなの教科書では、起業する前に考えておくべき事を別記事にまとめています。あわせてお読みください。
みんなの教科書記事 「起業して後悔しない為に起業する前に考えておくべき4つの事」
https://minnanokyoukasho.com/kigyo-before-point
まずはここから考える!起業のテーマ(業種・分野・業界)
起業のはじめのプロセス、テーマと課題・ニーズの中の、「テーマ」について解説します。
テーマ
テーマとは起業するドメイン(業種・分野・業界)の事です。例えば、ITの分野で何かやりたい。不動産関係の仕事で起業したい。ものづくりでビジネスを興したい。などがテーマになります。
これは、人によって、すでに決まっている場合もあるでしょうし、起業したいと考えてから、あらためて成功しやすい、あるいは自分にとって有利なテーマを探す場合もあります。自分が働いている会社と同じ仕事で独立開業するようなケースは、すでにテーマは決まっていることになりますね。
テーマの設定方法
テーマを設定する時には、以下の様な発想で考えていくといいでしょう。
- 自分がこれまでしていた仕事は何だろう?
- 仕事以外でも、自分が得意な分野は何だろう?
- 知識や経験が豊富にある分野は何だろう?
- 最近話題になっている事は何だろう?
- 自分の好きな事・趣味は何だろう?
- 他の人が好きな事・興味を持っていることはなんだろう?
あるいは、テーマを設定する時には、ミクロ視点(自分が好きなこと・周りの人が興味があるかなど)だけでなく、マクロ視点(これから伸びる分野、競争が激しくない分野など)で考えてみてもいいかもしれません。
- 市場規模(ある市場の経済)が大きいビジネスは何だろう?
- これから成長していくビジネスは何だろう?
- 競争が激しくない分野は何だろう?
ほとんどのビジネスでは、起業して新規に市場に参入する場合、既存の事業者(自分より先に事業を行っている企業)との競争が発生します。一般的に、新規に参入する場合には、経営資源(従業員などの人、設備などのモノ、お金)が少ないため、競争が激しい市場では難しいと言われています。
その点、市場が急成長している分野や業界は、競争も発生しますが、それ以上のスピードで市場自体が伸びていくため、新規参入者に不利にならない傾向があると言われています。
反面、市場が成熟したり衰退したりしている分野や業界は、競争が激しいため、新規参入は難しい傾向にあります。
なお、業界や市場が、成長段階にあるかどうかは、プロダクト・ライフサイクルと呼ばれる、商品・サービスが市場に投入されてから売れなくなるまでや新たな市場が生まれてから消滅するまでのプロセスで考えるといいでしょう。
もちろん、成熟市場や衰退市場に、新しいやり方で参入して成功しているベンチャー企業もありますので一概には言えませんが、大きくはこういった傾向があります。
また、一度テーマを設定したからといって、それにこだわり過ぎる必要はありません。設定した後で、もっと自分の強みを活かせたり、今後伸びていきそうな分野が見つかったりしたら、変更してもいいでしょう。
成熟した市場に新規参入して成功しているベンチャー企業の事例として、アルバイト求人の紹介サイトを運営する、株式会社リブセンスをご紹介します。
株式会社リブセンス http://www.livesense.co.jp/
リブセンスは、村上太一さんが起業し、リクルートという既存企業が大きなシェアを占めていた、求人業界に新規参入し、新しいビジネスモデル(ビジネスの仕組み)で成功した企業です。
リブセンスの創業時、求人ビジネスは、「広告モデル」でした。つまり、求人する企業は、求人を紹介する本などの媒体に、決められた料金を支払い、広告を掲載します。そのため、実際に応募がなかったり、求人が確保できなかったりしても、費用が発生してしまいます。
リブセンスは、こうした求人業界に、「成果報酬モデル」で参入しました。これは、求人の掲載自体は無料で行い、実際に求人が確保できた時のみ、報酬をもらうという仕組みです。求人する企業にとっては、求人出来た時のみ費用が発生するため、無駄なく求人を行えるので、大きな支持を集めました。逆にリクルートは、広告を獲得するために、大量の営業マンを抱えていたため、こうした新しい仕組みに対応が難しかったと言われています。
これがなければビジネスとして成り立たない!課題・ニーズ
つぎに、課題・ニーズについて解説します。ニーズとは、人が生活の中で不足しているものを求める欲求という意味です。みんなの教科書では、ビジネスを「社会や顧客が抱える課題やニーズをとらえ問題解決すること」と定義しています。つまり、ビジネスとは問題解決なのです。
例えば、「百貨店」というビジネスがあります。百貨店というビジネスが登場する前は、買い物は、肉なら肉屋さん、野菜なら八百屋さん、洋服なら服屋さん、本なら本屋さんと、それぞれの専門店でしか買えませんでした。様々な物を買うときは、あちこちの専門店を回らねばならず、不便で手間がかかっていました。百貨店は、多種多様な商品を同じ場所で販売することで、そこに行けば何でも揃う状態を実現し、顧客の課題を解決しているのです。
一度、周りにある色々なビジネスを考えてみましょう。大小の違いはあっても、全てのビジネス、あるいは商品・サービスは、社会や顧客の課題やニーズを解決しているはずです。
社会や顧客の課題やニーズを解決するビジネス、あるいは商品・サービスの事例として、株式会社ナビットをご紹介します。
株式会社ナビット http://www.navit-j.com/
ナビットは、各種データベースの販売や、スーパーなどの特売情報とレシピを提供するサイトを運営するなど、現在は様々な事業を展開していますが、はじめに生み出したサービスが、「のりかえ便利マップ」です。
こののりかえ便利マップ、首都圏にお住まいの方はよくご存知だと思います。電車に乗った時に、何両目に乗れば、階段やエスカレーター、目的地の出口に近いかが、ひと目で分かるポスターです。
創業者である福井泰代さんは、小さな子供を抱えて駅で困った経験がありました。駅を降りても、階段やエスカレーターがどこにあって、出口はどこなのか?重いベビーカーを押しながら、電車の何両目に乗ればいいのか分かれば便利になるのに…という発想から生まれた商品・サービスなのです。
課題・ニーズの探し方
課題・ニーズを探していく時には、以下の様な発想で考えていくといいでしょう。
- 普段の生活で自分が困っていることは何だろう?
- 周りの人が困っていることは何だろう?
- 社会的に解決しなければならない課題は何だろう?
- 自分は欲しい商品・サービスは何だろう?
- 周りの人が欲しがっている商品・サービスは何だろう?
- 何か無駄なものはないだろうか?省けないだろうか?
- 面倒くさかったり、手間がかかったりすることは何だろう?
課題・ニーズは、普段自分が感じている、または、周りの人や社会が抱えている、困っていること、欲しいもの、不満に思っていること、不便なこと、矛盾していること、無駄なもの、そうした感情・欲求そのものだと考えてください。
場合によっては、課題やニーズが先に見つかる場合もありますし、テーマと課題・ニーズが同時に見つかることもあります。むしろ、テーマが決まっていない場合は、課題やニーズが先に見つかるケースが多いかもしれません。
また、課題やニーズは顕在的(表に出てきていて見つかりやすいもの)と、潜在的(隠れていたり気付いていなかったりして見つかりやすいもの)と2種類あると言われています。一般的に、顕在的なものよりも、潜在的な課題やニーズを解決するビジネスの方が、大きなビジネスになると言われています。
課題やニーズを探す・見つけるときに、漠然と考えるよりも常に問題意識や仮説を持つことが大切です。仮説を持って情報に接することで効率的に課題やニーズの発見・検証ができるようになります。
なお、仮説を持つ方法については、下の本で戦略コンサルタントが詳細に解決していますので関心があればお読み下さい。
潜在的な課題やニーズを解決するビジネスの事例として、ヤマト運輸株式会社の「クロネコヤマトの宅急便」をご紹介します。
ヤマト運輸株式会社 http://www.kuronekoyamato.co.jp/top.html
サービス自体は、説明するまでもありませんよね。今でさえ、当たり前のサービスとして認識されている、この全国に遅れる小口貨物の宅配サービスですが、サービスが開始された時は画期的でした。
当時は個人向けの宅配は、郵便局などの窓口に持っていくことが当たり前で、いつ届くか分からない「小包」しかありませんでした。コストと手間がかかることから、業界でも儲からないことが常識だったのです。
ヤマト運輸は、逆に大口の企業向け配送サービスを捨て、個人向け小口宅配サービスに集中することで、新しい市場を開拓し、「個人が小口の荷物を、全国どこでも手軽に送ることができる」という潜在的な課題・ニーズを解決しました。
いずれにしても、常に問題意識(何か課題はないか、多くの人が求めるニーズはないか)を持って、普段の生活から考え続けることが大切です。問題意識を持って生活している場合と、そうでない場合とでは、気付きやひらめきが起きる可能性が全く違います。
まとめ
今回は、起業のテーマ(業種・分野・業界)の選び方と課題・ニーズの内容と探し方についてまとめています。
- 起業テーマ(業種・分野・業界)と選び方
起業する業種・分野・業界。自分の強みや得意なことの棚卸しや、ミクロ・マクロ視点で考える。 - 課題・ニーズと探し方
ビジネスは問題解決。社会や顧客が抱える課題やニーズを探す。
自分が力を発揮できる業種・分野・業界で起業し、社会や顧客の課題・ニーズを解決する事を意識すると、起業の成功可能性が高まります。
起業を志す全ての人に、有用な記事になれば幸いです。