脱サラ・独立開業・起業創業の失敗リスクを減らす3つのポイント

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起業の失敗を避ける

作成日:2015年12月3日 更新日:2016年2月16日

脱サラ・独立開業・起業創業に失敗はつきものです。しかし人生はリセットできませんので、取り返しのつかない失敗だけは避ける必要があります。

そこで今回は脱サラ・独立開業・起業創業の失敗するリスクを減らために起業家はどうしたらいいのか、大切なポイントをわかりやすく3点にまとめました。ぜひお読みください。

 

脱サラ・独立開業・起業創業方法と流れ:4つのプロセス

みんなの教科書では、脱サラ・独立開業・起業創業を4つのプロセスに分けて捉えています。①テーマと課題、②ビジネスアイデア、③ビジネスプラン、④計画の実行の4つです。

起業のプロセス

それぞれのプロセスの内容は、下の表の通りです。

プロセス 内容
①テーマと課題・ニーズ どんな分野で事業を起こすか、そしてその分野にはどんな課題やニーズがあるか
②ビジネスアイデア 課題やニーズをどのように解決するか
③ビジネスプラン ビジネスアイデアを実現する具体的な計画はどのようなものか
④計画の実行 なるべく小さく始め、顧客や市場の反応を見て、方法を修正したり、場合によっては撤退したりする

今回の記事では、④計画の実行について、詳しく解説していきます。

また、みんなの教科書ではビジネスプラン・事業計画書の作成方法を別記事に詳しくまとめています。あわせてお読みください。

みんなの教科書記事 ビジネスプラン・事業計画書とは?テンプレート・書き方・作り方

「ビジネスプランを実行する」だけでよい?計画の実行のポイント

まずあなたに覚えていておいて欲しいのが、脱サラ・独立開業・起業創業した後に「全てが計画通りにいくことはありえない」ということです。つまり、どんなに仮説検証を繰り返して計画を練りあげても、想定していなかった事態が起きたり、計画通りにお客さんが増えなかったり、思うように商品やサービスが売れなかったりといった事が起きる(起き続ける)のです。

商品やサービスをローンチした後に、顧客の反応によっては商品やサービスを改良したり、販売方法を変更したり、広告宣伝を見直すなど、大きく戦略や方針を変更することが必要になることも少なくありません。また、場合によっては撤退という意思決定をする必要がある場合もあるでしょう。

いずれにしても、どれだけ起業前に考えて準備して練りに練ったビジネスプランであっても、想定外の状況が発生します。そのため、起業後はビジネスプランを修正しながら進めていくことを前提とする必要があります。

こうした前提に立つと、いざ起業にあたって最も重要と言っても過言ではない事は「リスクを減らし取り返しのつかない失敗を避ける」ということなのです。起業はギャンブルではありません。想定外の事が起こった時に、打つ手が無い(資金が足りない、人材が足りない、商品・サービスを変更できないなど、事業の継続が不可能になること)という事態だけは避けなければなりません。

こうしたことからみんなの教科書では、いざ起業にあたり気をつけるべき点として、以下の3点がポイントだと考えています。

  1. 会社や勤めをギリギリまで辞めない
  2. 必要なお金を少なくする、なるべくお金を借りない
  3. リーンスタートアップ、試してみる・テストする

それぞれの内容について、詳しく解説していきます。

ビジネスにおいてはPDCAサイクルと呼ばれる、事業活動を管理する上での考え方があります。

PDCAサイクルでは、業務のプロセスを、計画(Plan)・実行(Do)・評価(check)・改善(Action)の4つを順に行います。最後の改善(Action)の結果をもとに、次の計画(Plan)につなげることで、継続的に業務改善を繰り返すことが可能になります。

これはまさに、計画段階での仮説検証のプロセスを、実際の事業においても実行しているものです。ビジネスプランだけでなく、実際のビジネスにおいても、仮説検証のプロセスは必要になるのです。

 

PDCAサイクル

①会社や勤めはギリギリまで辞めない!はやる気持ちはこらえる

1つめのポイントは、脱サラ・独立開業・起業創業する場合、なるべくギリギリまで会社や勤め先を辞めないということです。

うまくいきそうなアイデアを思いついたら居ても立ってもいられなくなり、すぐに全力で取り組もうとか、会社を辞めて起業しようとか考える方は大勢いらっしゃいます。人によってはビジネスアイデアが思いつく前に「何をやるか」が明確に決まっていないのに、会社や勤めを辞めてしまう方も見受けられます。

今市場にない画期的なビジネスアイデアは、誰かが始める前に早く始めないと、先行者のメリットが享受できないという側面もあります。会社を早く辞めて、新しいビジネスを早く始めることが重要なケースももちろんあります。

ですが前述したように、起業しても想定外の事が起きたり、計画通りいかなかったりすることが多々起こります。だからこそ、起業してから、こんなはずじゃなかったとか、時間や人手が全然足りないと、悩んだり後悔したりしないためにも、起業前にできることはできるだけやっておくことが重要です。

勤めを辞めて起業してしまうと、基本的には収入は起業後の事業の売上や利益から確保していくしかありません。計画よりも売上がたつまでに時間がかかったり、思ったように利益があがらなかったりした時のためにも、ギリギリまで会社や勤めを辞めずに収入のあてを確保しておくべきです。そのために、就業時間後や休日を利用して、少しずつでもいいので起業準備を進めていきましょう。

また、会社を辞めなければ起業できないということは思い込みかもしれません。理解のある会社や上司であれば、直接今の勤め先の企業の事業内容と競合しないかぎりそうした活動を認めてくれるケースもあると思います。できれば、会社に在籍しながら空いた時間を利用して、副業のような形でビジネスをスタートし、軌道に乗りかけたり時間や人手をもっと掛ける必要が出てきたりした時点で、起業する形が良いのです。

※最近ではだいぶ副業についての考え方もゆるくなっていますが、会社によっては副業を禁止する規程を就業規則に盛り込んでいる場合もあります。最悪の場合解雇なども考えられますので、注意してください。

ギリギリまで勤めを続けながら起業することで、起業したけど収入がないという取り返しのつかない失敗を避けリスクを減らすことができます。

会社を辞めずに起業準備した例として、ハウツーサイトnanapiを運営する、株式会社nanapiを起業した古川健介氏の事例を紹介します。

nanapi  https://nanapi.jp/

古川健介氏は早稲田大学を卒業後、2006年にリクルートに就職します。その翌年の2007年にロケットスタートを立ち上げ、2009年にはリルートを退職してnanapiに専念されています。

ロケットスタート立上げ時は、会社もバックグラウンドも異なる5人で創業されています。お一人だけでなく、創業メンバーの全てが副業的に創業された訳ですね。もともと学生起業家であったことや、独立やスピンアウト(既存の企業が行っている事業をもとに独立し別の企業として事業を運営すること)に寛容な文化のあるリクルートであったため、こういった活動ができたという背景は確かにあります。

ただし逆に言えば、そうしたバックグラウンドがあり起業して成功の可能性が高いと思われる技術や知識がある人でも、ギリギリまで収入の道を確保しながら起業準備をしていたのです。

なお、古川健介氏は、2014年に株式会社nanapiをKDDIに売却しEXITを達成しています。売却額は77億円ともいわれています。バイアウト(買収)によりEXITを達成した起業家の1人です。

②必要なお金を少なくする、なるべくお金を借りない!脱サラ・独立開業・起業創業資金を準備する

2つめのポイントは、脱サラ・独立開業・起業創業に必要な資金を調達する際に、必要なお金を少なくするとともに、なるべくお金を借りないようにするということです。

必要なお金を少なくする

まずは必要なお金を少なくすることです。起業にあたり、必要なお金をできるだけ少なくすることで、そうしたお金を失うリスクはもちろん下がってきます。

創業時に必要な資金は、基本的には初期投資と当面の運転資金になると思います。これらの費用はできるだけ見直して、コストを下げていきます。どうしても買わなければならないものは、以下の順に考えてきましょう。

  1. タダでもらえないか
  2. 借りられないか
  3. 中古品はないか
  4. もっと安く買えないか
  5. 新品を買う

自分にとっては必要なものでも相手にとって不要なものはあるものです。何か必要な物があれば、友人知人の伝手をたどってタダで譲ってもらえないか探ったり、地域誌やインターネットで“譲ります”欄を探すことでタダで手に入ったりすることもあります。

また、最近では起業の挨拶代わりに、友人知人宛に「ウィッシュリスト」と呼ばれる欲しい贈り物リストを送ることも増えてきています。
amazonほしい物リスト https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=720602
これは、起業家側がお祝いに欲しいものをリスト化し、友人知人でお祝いや応援したい人がそれを通販サイトで選んで送れるというサービスです。

また、タダでは手に入らないとなったら、ここでも買うのではなく、レンタル、リースが利用できないかを調べてみます。買うとしても、ヤフーオークションなどで中古品を買えないか、もっと安く売っている店はないか、相見積もりを頼んでみようなど、なるべく安く手に入れる方法を考えましょう。商品でなくサービスであっても、例えば最初のオフィスは知り合いの会社に間借りさせてもらうなど、必要なお金を少なくする方法があります。

なるべくお金を借りない

起業・創業・独立開業に必要な資金を調達するにあたり、重要な事としてできるだけ自己資金を使って外部資金を使わないようにするということがあります。

起業・創業・独立開業に必要な資金調達の種類を表にまとめました。

分類 種類 メリット デメリット
自己資金 貯金など 自分や家族の援助 返さなくて良い 生活や人生設計に影響
外部資金 融資 親戚や親しい友人知人 期間や利子に融通がきく 人間関係に影響
銀行などの金融機関 まとまった額が借りられる 担保や連帯保証が必要
消費者金融など 手続きが簡単 利率が高い
出資

個人投資家
ベンチャーキャピタル

原則として返さなくてよい

配当などのリターン
経営権に影響

脱サラ・独立開業・起業創業に必要な資金調達を行うにあたって、まずは自己資金が基本となります。銀行などの金融機関から融資を受ける場合であっても、ある程度の自己資金は必要になりますので、必須ともいえます。

自己資金で足りない部分は、家族、親戚、親しい友人知人に援助してもらったり、借りたりすることをまず考えましょう。逆に、こうした方からも借りられないような人間関係や起業プランであれば、少し見なおしてみる必要がありそうです。

その次は、銀行などの金融機関です。ある程度まとまった額が期待できる反面、担保や連帯保証など、仮に起業がうまくいかなかった後に、代表者に返済責任などのリスクが残る場合があります。一方で、日本政策金融公庫の新創業融資制度など、無担保無保証人で事業計画書をもとに融資が受けられるような制度もあります。多くの起業家が融資を検討する場合は、この新創業融資制度の活用を検討する場合が一般的です。

日本政策金融公庫 新創業融資制度
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

最後に、投資を受けることを検討します。これは、金融機関からの借り入れと検討の順序が逆になる事もあります。出資の場合は、借り入れのような返済の義務がないのが一般的んですが、出資比率によっては経営権が奪われるリスクもあります。

起業創業や独立開業に必要となる資金をなるべく少なくした上で、資金調達をなるべく自己資金でまかない外部資金を抑えることで、起業してうまくいかなかった上に借金が残るといった、取り返しのつかない失敗を避けることができます。

イラストやマンガ、小説などを介したコミュニケーションサービス「pixiv」の創業者片桐孝憲氏の事例を紹介します。
起業して成長スピードがあまりに早いと、資金繰りがかなり難しくなってきます。業績が伸びていても当座の運転資金に困るケースがよくあるのですが、片桐孝憲氏は消費者金融で借金して資金繰りをつないだそうです。

pixivが急成長してサーバーがあらたに必要になったんですが、お金が全然無かったので消費者金融4社から50万ずつ、計200万円の資金調達をして乗り切りました。キツかったけどまあ死ぬことはないだろうと思ってましたね。

みんなの仕事場「vol.19 片桐 孝憲 (ピクシブ株式会社 代表取締役社長)」よりhttp://www.shigotoba.net/learn/special/managers/details/019/

みんなの教科書では全くおすすめできませんが、起業家は常に資金調達と資金繰りに頭を悩ませているということがよく分かると思います。

③やってみなければ分からないなら!リーンスタートアップ、試してみる・テストする

3つめのポイントは、リーンスタートアップ、試してみる・テストするということです。

リーンスタートアップ

リーンスタートアップとは英語で言うとLean Start-upとなり、直訳すると「ムダの無い起業」という意味になります。

起業アイデアを実践する際に、将来的には大きな売上が見込めるような商品・サービスであったり、様々な事業展開が可能なビジネスモデルであったりしても、まずはコストを抑えて最低限の機能を持った商品やサービス・試作品を作ります。

その上で、そうした最低限の機能を持った商品やサービス・試作品を、顧客や顧客候補に買ったり使ってもらったりして、その反応をフィードバックして商品やサービスの改善や、事業方針の変更、場合によっては撤退や事業の修正を行います。

リーンスタートアップのポイントは、新たな事業を小さく始めて成功しそうかどうかを早期に見極め、芽がないと判断したら、すぐに製品やサービスを改良したり、事業の内容を一新したりして、軌道修正を繰り返すことにある。傷が浅いうちに進路を変更し、重傷を負って事業そのものが継続できなくなる事態に陥るのを防ぐためだ。こうしてチャレンジを続け、成功へと近づいていく。

日経ビジネスオンライン「『リーンスタートアップ』─小さな失敗を重ねて育てる」より http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120918/236982/

  • 初期投資を抑えて新たな事業を小さく始める
  • 少数の顧客に提供して反応を見る
  • 反応を評価し、継続するかピボット(方向転換)する

リーンスタートアップ

日経ビジネス2012年7月23日号を元に筆者作成

起業に限らず、実際のビジネスも仮説検証の繰り返しです。ビジネスが始まってからも、仮説をもとに商品・サービス開発を行い、少数の顧客や顧客候補の反応を見て仮説検証し、改善を加えて大規模に展開していくのです。

リーンスタートアップについてはこの本が詳しいです。この本が出てから、特にインターネットビジネスを中心としてこういった小さく始めて仮説検証し改良あるいはピボットするというやり方が一般的なものとして知られるようになりました。

インターネットサービスにおける仮説検証に、ABテストと呼ばれる手法があります。

A/Bテストとは、異なるパターンのWEBページを複数用意し、どちらの方が実際にユーザーに使われたり効果の高い結果が得られたりしたかを実験する方法のことです。WEBページのレイアウト・デザイン・サイト内の導線を良くするために実施されます。

ボタンの位置や色、メッセ-ジなど細かい変更を行い、最も良い結果を得られるために仮説検証を繰り返していきます。 インターネットサービスのため、仮説を立てたらすぐに修正し、またすぐに結果が得られるため、仮説検証のスピードを大変早く回し続けることが可能になります。

インターネットで人材紹介や転職サービスを手掛ける、株式会社リブセンスの事例が下記サイトにまとまっています。インターネット以外の業界の方はこちらを見るとよく分かると思います。

登録数2倍にしてと言われた時の正しい対処法
http://www.slideshare.net/KurosawaChihiro/2-42758053
株式会社リブセンス http://www.livesense.co.jp/

試してみる・テストする

よく起業家や起業志望者に会って、ビジネスアイデアのブラッシュアップやビジネスプランのリバイスを一緒にディスカッションしていると、「でもやってみなければ分かりませんよね?」という事を言われることがよくあります。

起業は新しいことにチャレンジするので、これまでの知識や経験があてにならない部分もあるため、ある意味これは間違いではありません。

ただし、「やってみないと分からない」といってそのままにしておくのではなく、様々な工夫をして意思決定の判断になる情報を集めるべきです。

意思決定の判断になる情報は、やはり顧客や顧客候補によるフィードバックです。

顧客や顧客候補に自分のアイデアや商品・サービスのイメージを話してヒアリングしたり、商品であればサンプルや試作品を実際に作って、使い勝手や意見感想をフィードバックしてもらったりするなどの工夫が有効です。

テストマーケティング

テストマーケティングは、新商品や新しいサービスを、大規模にローンチ(商品・サービスを市場に投入すること)する前に、地域・顧客層・期間を限定して、試験的に商品の販売やサービスの提供を行うことをいいます。

まず、こうしたテストマーケティングを行って、顧客の反応や販売状況の情報収集・分析を行って、本格的な販売の際のプロモーション戦略の構築などに活かします。

β版(ベータ版)

β版とは、特にソフトウェアやインターネットサービスにおちて、開発途上の段階あるいは本格的にローンチする前に、特定のユーザーに使用してもらうことをいいます。ユーザーからの評価や意見・感想・フィードバックを、バグ(プログラミング上の問題点)の修正やインターフェース(ユーザーの操作性)等の改善に活かします。

起業に際して、ビジネスアイデアを仮説として実際の顧客の反応を見ながら、方向性を修正していくことで成功確率が上がるため、大きな投資をするなど取り返しのつかない失敗を避けることができます。

まとめ

今回は、「脱サラ・独立開業・起業創業の失敗リスクを減らす3つのポイント」と題して、リスクを減らし大きな失敗をしないためのポイントについて解説しています。

  1. 会社や勤めをギリギリまで辞めない
  2. 必要なお金を少なくする、なるべくお金を借りない
  3. リーンスタートアップ、試してみる・テストする

についてまとめています。

今回の記事でご紹介した、脱サラ・独立開業・起業創業のリスクを下げるポイントをしっかりと理解して、逸る気持ちを抑えて、大きくお金をつかう前に仮説検証を繰り返していき実現可能性を高めてから、起業に踏み切ってください。

起業を志す全ての人に、有用な記事になれば幸いです。

 


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