いざ開業!個人事業主と株式会社どちらを選ぶ?流れや費用を解説

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ビジネスプランを作成したらいよいよ開業です!起業創業・独立開業には、個人事業主として開業する方法と、株式会社などの法人を設立する方法と2つに分かれます。どちらもメリットデメリットがありますが、今回は、個人事業主登録と株式会社設立を比較して、かかる費用や方法・流れについてまとめました。

 

まずはここから!個人事業主と株式会社とどちらを選んだら良い?

会社設立

bjaved98 / Pixabay

起業創業・独立開業して事業を開始する際、まずは「個人事業主として開業する」か「法人(株式会社等)を設立する」か、どちらを選んだら良いかということを考えましょう。

個人事業主とは

個人事業主は、株式会社等の法人を設立せず自ら事業を行っている個人のことです。一般には自営業者とも言います。屋号(社名のようなもの)も持てますし、銀行口座も開くことができます。手続きも簡単で始めやすい反面、税金や信用などのメリットは法人の方が大きいです。

法人とは

自然人以外で法律によって「人」とされているものを言います。こういう言い方をすると難しい感じがしますが、ここでは以下のような特徴があるということだけ頭に入れておきましょう。

  • 権利義務の主体となる
    登記等を行えて契約の当事者になれる
  • 構成員から独立している
    事業体の構成員と事業体の財産は区別されている(個人事業は区別されない場合がある)
  • 物理的な寿命がない
  • 法人税課税の対象となる

個人事業主と法人(株式会社等)の違い

個人事業主と法人(株式会社等)の違いを簡単に言うと、個人事業主は手続きが簡単な一方で節税や信用面のメリットが少なく、法人は手続きが複雑な一方で節税や信用面でメリットが大きいということになります。

個人事業主と法人(株式会社等)の違いを表にまとめました。

  個人事業主 法人(株式会社等)
資本金 不要 必要
社会的信用度 低い 高い
開業の手続き 比較的簡単 比較的煩雑
設立費用 不要 必要
帳簿(経理処理)

比較的簡単
※青色申告には複式簿記必要

複雑(複式簿記が必要)
事業内容の変更や廃業手続 比較的簡単 煩雑
責任 無限責任 有限責任
事業費と生活費の融通 可能 原則不可能
税金 所得税(累進課税のため所得が上がれば税金が多くなる) 法人税(税率は2段階のみ)

初めから株式会社でスタートするケースも決して少なくないですし、まず個人事業主でスタートして軌道に乗ったら法人化を検討するというケースもあります。ずっと個人事業主で進めていくという方法もあるのですが、ある程度の規模(売上高1000万円ぐらい)になれば信用面などのメリットを勘案して法人化した方がメリットがあるでしょう。

手続きは簡単!個人事業の開始手続き

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RyanMcGuire / Pixabay

個人事業主の開業はとても簡単で、税務署(と都道府県税事務所)に届出書を作成して提出するだけです。そのため、専門家に頼まず自分で行うケースが多いです。

税務署への個人事業主開業の届出

開業後1ヶ月以内に、「個人事業の開廃業等届出書」を最寄りの税務署に提出します。書類は最寄りの税務署でもらうこともできますし、税務署のホームページからダウンロードもできます。

個人事業の開業届出・廃業届出書
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/04.pdf

都道府県税事務所への事業開始届出

個人事業主の登録については、税務署への届出だけで終わりです。しかし、納税は都道府県にもする必要がありますので、届出を同時に済ませておきましょう。なお、都道府県によって書類の名前などが異なりますのでご注意ください。

(参考)東京都主税局 事業開始(廃止)等申告書
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shomei/index-z2.htm

なお、個人事業主の登録については別記事で詳細を解説しています。あわせてお読み下さい。
ビジネス@みんなの教科書記事「サラリーマンが副業して確定申告で税金還付・節税する方法」 https://minnanokyoukasho.com/business-secondjob-tax1

確定申告をする!個人事業主の決算手続き

個人事業主は、確定申告を行い納税する所得税を確定することで決算の手続きとします。法人の場合は決められた決算月に決算を行いますが、個人事業主は12月31日を決算日とすることが税法により定められています。そのため、個人事業主が決算を行なう際には、1月1日から12月31日までの期間における売上・経費・利益から、所得と税額を決定します。

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法人(株式会社)とは?仕組みと特徴

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ここでは、法人の仕組みと特徴について解説します。法人にもいくつか種類があるのですが、今回の記事では、起業創業・独立開業によく利用される「株式会社」を例に解説していきます。

株式会社の特徴・メリット

株式会社の特徴・メリットには以下のようなものがあります。

  • 間接有限責任(倒産しても個人的財産を失わないですむ)
  • 権利義務の主体となれる
    不動産登記等が行える、契約当事者になることができる
  • 税務上のメリットがある
    (例)売上(3000万円)-費用(2200万円)=利益(800万円)の時に、個人事業主の場合は800万円の利益に対して所得税が課税されるが、法人化して役員報酬として800万円を受け取った場合は給与所得控除(約200万円)が差し引かれ600万円に対して所得税が課税される
  • 社会保険に入れる

間接有限責任を図で説明したのが下の図です。倒産や廃業などに追い込まれた場合に、個人事業主の場合は債権者の権利が事業主の非事業用資産まで及ぶ(無限責任)のに対し、株式会社の場合は出資者は出資額までしか責任を追わない(有限責任)のです。

万一の際に、個人事業主だと事業に関係のない財産を処分して弁済しなければならないケースがあるということなのです。それに対し、株式会社であれば株主としての出資額までしか責任を負わないため、リスクを小さくできるのです(ただし、経営者(取締役)としての責任は負う場合があります)。

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株式会社の特徴・デメリット

株式会社にはデメリットももちろんあります。

  • 設立手続に一定の費用がかかる
  • 法人住民税等の法人にしかかからない税負担がある
  • 株主総会等の会社法で定められる一定の手続が必要
  • 税務申告が煩雑なため税理士に任せた方が良い(費用がかかる)
  • 社会保険に入らなければならない

ざっくりというと、株式会社のデメリットはコストと手間がかかるということになります。メリットとデメリットを比較して、株式会社を設立して事業を行うかどうか考えましょう。

順を追って細かく解説!株式会社設立の流れ

株式会社の設立は行政書士や司法書士などの専門家に依頼せず、自分で行うことができます(実際に私も会社設立を行ったことがあります)。ただし、自分で行うのは結構な手間の上修正などがあった場合に大変なため、専門家に頼むべきです。

専門家に依頼する場合には指示に従っていけばいいのですが、株式会社を設立する大体の流れは自分でも理解しておいたほうがいいでしょう。株式会社設立の流れを図にしました。

株式会社設立の流れ

それぞれのプロセスについて解説していきます。

定款記載事項の決定

定款とは会社の基本的な規則や方針をまとめたものです。国にとっては憲法のようなものです。

会社を設立する場合は定款を作成することになります。この定款に記載する事項は、①絶対的記載事項②相対的記載事項③任意的記載事項の3種類があります。

絶対的記載事項とは

絶対的記載事項は、定款で定める必要があり記載がないと無効となるもののことです。具体的には、①目的②商号③本店所在地④出資財産価額⑤発起人の氏名住所です。代表的なものを解説します。

■ 目的

目的とは会社が営む事業の内容のことで、原則として会社は定款で定めた目的の範囲内でしか営業活動を行うことができないとされています。

目的を決める際のポイントは、「許認可が必要な事業は目的に定めておく」ということです。例えば、人材派遣業(厚生労働省)・保険代理店(金融庁・財務局)・飲食業(保健所)・ネットオークション(古物営業:警察)などは、許認可を取る際に定款の目的に定めることが必要になります。

定款の目的変更は3万円の費用がかかってしまうので、将来に行う可能性がある事業はできるだけ盛り込んでおきましょう。

定款の目的

■ 商号

商号とは、「株式会社○○」「××株式会社」などの名称のことで、原則として自由に決められますがが一定のルールがあります。

  • 「株式会社」を使用しなければならない。
  • 使用できる文字に制限があります。
    漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字、一部の記号など
  • 銀行・信託・証券業でない場合は、〇〇銀行、××信託、△△証券などの文字は使用不可
  • 著名な社名・公序良俗に反する言葉、他人の商標等は使用不可
  • 同一の本店所在地の全く同じ商号は使用不可

■ 本店所在地

本店所在地は、この段階では市町村/区までは決定しておく必要があります。

相対的記載事項

相対的記載事項は、定款で定めない限り効力が認められないもののことです。機関設計、役員の任期の変更、株式の譲渡制限などが該当します。 

■ 機関設計

機関設計というと難しい言葉ですが、簡単に言うとどういう種類の役員を置くかということになります。

  • 取締役および代表取締役に関する規定
    選解任・任期についての定めなど
  • 取締役会
    設置するかどうか・取締役の人数・取締役会の招集・決議方法に関する定めなど
  • 監査役
    設置するかどうか・監査役の人数・選解任・任期についての定めなど
  • 株主総会・取締役・監査役・会計監査人・会計参与などの設置

任意的記載事項

任意的記載事項とは、定款以外の諸規則で定めても有効だが定款で定めてもよいもののことです。公告の方法、発行可能株式総数、事業年度などが該当します。

公告とは世に情報を広く知らしめることで、株式会社については決算情報などを公告することが義務付けられています。公告の方法は官報に記載する方法と、日刊新聞紙または電子公告で行う方法があり、定款に公告方法を記載しなかった場合は官報に記載することになります。

定款の作成・認証

こうして定款の内容が決まれば、実際に定款を作成し、公証役場で公証人から認証を受けることになります。

定款の作成

定款は、3部(公証役場保存用、会社保存用、法務局提出用)作成し、発起人全員の実印による押印が必要です。

定款の綴じ方

定款には用紙や枚数に規定はありません。また、誤りがあった場合には訂正は二重線+発起人の修正印を押し、「○字削除、×字加入」と修正の内容を記載します。

定款の認証

こうして作成した定款3通・印鑑証明書(発起人全員1通ずつ)・実印(公証役場に行く人・行けない人は委任状)を公証人役場に持って行き、公証人の認証を受けます。3通のうち1通は公証役場で保管(収入印紙添付)、「原本」を原始定款として会社に保管、「謄本」は設立登記申請時に法務局に提出します。

費用は、公証人認証手数料が5万円、収入印紙が4万円の計9万円です。なお、電子認証を使えば収入印紙代4万円が節約できます。行政書士や司法書士などの専門家に依頼する場合は、電子認証が可能かどうか確認するといいでしょう。

資本金の払込

発起人は、株式引受後払込取扱場所として定めた口座(発起人の既存の個人口座)に出資金の全額を払い込みます。その際、発起人は払込証明書を作成します。

払込証明書

この書面と払込を受けた預金通帳のコピーを取り、払込証明書を作成します。

  1. 払込証明書
  2. 払込を受けた預金通帳の表紙
  3. 払込を受けた預金通帳の表紙の裏(表紙をめくったページ)
  4. 払込のされたページ

4枚をホチキス止めして各ページに割印します。

取締役の選任

次に、設立時取締役の選任を行います。

設立時取締役の選任は発起人の議決権の過半数をもって決定します。設立時取締役は最低1名以上でよいのですが、取締役会を設置した場合には最低3名必要となります。なお、設立時取締役定款で定めることもできます。設立時取締役を定款で定めた場合は、出資金の払込が完了した時点で、設立時取締役として選任されたものとみなされます。

発起人は、設立時取締役を選任した後に「設立時取締役選任決議書」を作成します。
※定款で設立時取締役を定めた場合には、「設立時取締役選任決議書」の作成は不要です。

会社設立申請

ここまで準備できれば法務局に株式会社の設立を申請します。

設立申請の前に

会社設立登記申請の際には会社の代表印が必要になります。そのため、遅くとも設立登記申請前には代表印を作成しておく必要があります。また、いずれ用意することになるので、銀行印・認印・ゴム印等もセット作成するとよいでしょう。インターネットであわせて3万円前後で作成できます。

ハンコヤドットコム http://www.hankoya.com/

印鑑一覧

印鑑一覧2

印鑑一覧3

会社設立登記申請(法務局)

書類の準備ができれば、法務局で会社設立登記申請を行います。登記申請は会社の代表者(代表取締役)が行います。

会社設立登記申請に必要なもの

法務局での会社設立登記申請に、必要なものは以下の通りです。

  • 株式会社設立登記申請書(印紙添付
  • 定款(公証人に認証済み「謄本」)
  • 取締役等の就任承諾書
  • 本店所在場所決議書
  • 払込証明書、
  • 印鑑証明書(代表取締役の個人の実印)
  • 印鑑届出書

登録免許税

株式会社の設立登記には、資本金の1000分の7または15万円の高い方の登録免許税がかかります。これは、印紙を購入し株式会社登録申請書に添付します(割印せずに法務局窓口に提出)。

会社の成立

会社設立申請から書類に不備がなければおおよそ1週間後に会社が成立します。会社が成立したら、登記簿謄本(全部事項証明書)で成立を確認(1部1000円)しましょう。同時に、印鑑カード、印鑑証明書も発行可能となります。

設立後の届け出

法務局で設立登記が終われば株式会社設立は完了ですが、設立後には税務署・都道府県税事務所への届出が必要になります。

■ 税務署への届出に必要な物

  • 法人設立届出書
  • 色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 棚卸資産の評価方法の届出書(任意)
  • 減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
  • 添付書類(定款のコピー・登記事項証明書・設立時貸借対照表・株主名簿)

■ 都道府県税事務所への届出に必要な物

  • 法人設立届出書
  • 登記簿謄本(コピー可)
  • 定款の写し

従業員がいる場合は、労働基準監督署、公共職業安定所、社会保険事務所へも届出が必要です。また、銀行で口座開設も忘れずに行いましょう。金融機関によっても異なりますが、一般的には以下が必要になります。

■ 銀行の口座開設に必要な物

  • 登記簿謄本(コピー可)
  • 代表者本人確認証明書(免許証など)
  • 登録する銀行印

いくらかかるの?株式会社設立の費用

株式会社設立の事務費用はいくらかかるのでしょうか?仮に、行政書士や司法書士などの専門家に頼まず、全部自分でやった場合には24万円かかります。

項目 内容 費用
定款認証手数料 定款認証 50,000円
定款添付用収入印紙 定款認証 40,000円
設立登記用収入印紙 設立登記 150,000円
合計   240,000円

ただし、定款の認証時に電子認証をした場合、定款に添付する収入印紙が不要になります。

項目 内容 費用
定款認証手数料 定款認証 50,000円
設立登記用収入印紙 設立登記 150,000円
合計   200,000円

一般的には電子認証する場合は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することになります。そのため、合計の20万円に専門家に支払う費用(数万円から10万円程度)がかかってきます。

まとめ

今回は、個人事業主登録と株式会社設立を比較して、かかる費用や方法・流れについてまとめました。

  • 個人事業主と法人
  • 個人事業主の開始手続き
  • 個人事業主の決算手続き
  • 株式会社の仕組みと特徴
  • 株式会社設立の流れ
  • 株式会社設立にかかる費用

についてまとめています。

個人事業主・株式会社それぞれにメリットデメリットがあります。自分が目指すビジネスの規模や状況にあったスタイルの形態を選んでください。

起業を志す全ての人に有用な記事になれば幸いです。

 


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