大学に進うとき「奨学金」を受け取れたら経済的に随分と楽になるものです。
しかし「奨学金」は「返済しなければならない」ので、卒業後に大きな負担となる可能性があります。
敬遠している方も多いでしょう。
実は最近、日本学生支援機構において新しい給付型奨学金の制度が開始され、大学生でも比較的多くの方が「返さなくてよい奨学金」を利用できるようになっています。
大学に入ってからでも申請できるので、対象者はぜひ今からでも検討しましょう。
今回は返済不要な「給付型奨学金」を大学生が申請・受給する方法を解説しますので、経済的支援を希望する学生の方や親御さんは参考にしてみてください。
返済不要な「給付型奨学金」とは
奨学金とは、経済的に困難な事情があり学業成績が優秀など一定要件を満たす学生に対し、就学のために支給されるお金です。
「貸与型」と「給付型」の2種類があります。
貸与型奨学金とは
貸与型奨学金とは「貸付金」としての奨学金です。
「一種の借金」であり、卒業後に返済しなければなりません。
利息がつく「有利子型」と利息のつかない「無利子型」があり、有利子型の場合には利用者にとって、さらに大きな負担となります。
また日本学生支援機構の貸与型奨学金の場合、親などの親族が連帯保証人になるケースが多数です。
そうなると、子どもが返済できない場合に親に支払い義務が及び、親子ともども取り立てに追い詰められる状況に陥るケースが多々ありました。
給付型奨学金とは
給付型奨学金は、「与える」タイプの奨学金です。
もらうものなので、返還の必要はありません。
卒業後、返済しなくても良いので気軽に利用できます。
もちろん親が代わりに返済する義務も生じません。
就職できなくても低収入でも取り立てを受ける心配はありません。
奨学金トラブルが社会問題に
ここ数年間において、いわゆる「奨学金トラブル」が社会問題になっていました。
数百万円にも及ぶ高額な奨学金を利用したのはいいけれど、卒業後に就職できなかったり非正規雇用となったりして返済ができない人が多かったためです。
本人が返済しない場合、日本学生支援機構は連帯保証人となっている親へ支払いを要求します。
子どもも親も両方支払えない場合、自己破産せざるを得ないケースも相次ぎました。
奨学金を抱えているために結婚や出産を控える若者も増加し、今の少子高齢化社会問題にも拍車をかけてしまったのです。
このように奨学金を返せないトラブルが社会問題化したこともあって、今回日本学生支援機構では「給付型奨学金制度」の拡充が行われました。
新しい「給付型奨学金」の制度ができた
日本学生支援機構では、従来にも給付型奨学金の制度がありましたが、利用条件や審査が厳しく適用できる方は少数でした。
2020年4月からは給付型奨学金の制度があらためられ、より多くの方が利用できるようになっています。
ただしまだ一般に情報が浸透していないため、条件を満たしていても申請していない方が少なくありません。
大学に進学してからでも申請できるので、利用できるなら、早めに申しこみましょう。
給付額の目安
給付型奨学金の審査に通過したら、どのくらいの奨学金を支給してもらえるのでしょうか?
国公立か私立か、自宅通学か下宿か、また世帯収入によっても違いがありますが、概ね次のとおりとなります。
【国公立の場合】
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
大学短期大学専修学校(専門課程) | 9,800~29,200円(11,100~33,300円) | 22,300~66,700円 |
高等専門学校 | 5,900~17,500円(8,600~25,800円) | 11,400~34,200円 |
【私立の場合】
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 |
大学短期大学専修学校(専門課程) | 12,800~38,300円(14200~42500円) | 25,300~75,800円 |
高等専門学校 | 89,00~26,700円(11,700~35,000円) | 14,500~43,300円 |
※()内は生活保護世帯で自宅通学する場合
また入学金や授業料の減免を受けられる可能性もあります。
【非課税世帯における減免限度額の目安】
- 国公立…入学金28万円まで、授業料54万円まで
- 私立…入学金26万円まで、授業料70万円まで
受給資格、対象者の条件
大学入学時期に関する条件
大学通学中の学生が給付型奨学金を申請するには、大学入学時期に関する要件を満たす必要があります。
原則的に「高校等の学校を卒業してから2年以内に大学に進学」しなければなりません。
具体的には以下のいずれかの条件を満たす人が条件を満たします。
- 高校などを卒業した年度の翌年度末から大学入学日までの期間が2年未満
「高校など」には特別支援学校の高等部や高等専門学校、専修学校の高等課程なども含まれます
【高認試験に合格した場合】
- 16歳になった年度の初日から高認試験に合格した年度末までの期間が5年未満、かつ高認試験に合格した年度の翌年度末から大学へ入学した日までの期間が2年未満
上記以外でも、外国で12年間文部科学大臣が認める学校教育を受けた場合やそれに準ずる場合、文部科学大臣が認定した教育施設や専修学校で一定年数教育を受けた人なども対象となります。
いずれにしても、資格を満たしてから2年以内に大学に入学する必要があります。
学力基準
学力に関しても基準があるのでみてみましょう。
入学後1年未満の場合、次の1~3のいずれかに該当する必要があります。
- 高校における成績の平均値が3.5以上、または入試成績が上位2分の1に入っている
- 高認試験の合格者
- 将来、社会で自立して活躍する目標を持って学修する意欲をもっていることが「学修計画書」などの資料によって確認できる
入学後1年以上を経過した場合、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 在籍する学部において、平均成績が上位2分の1に入っている
- 修得した単位数が標準単位数以上であり、将来、社会で自立し、活躍する目標を持って学修する意欲をもっていることが、学修計画書によって確認できる
なお災害や傷病が原因で標準単位数が足りない場合、学修意欲さえ認められれば給付型奨学金を受けられる可能性があります。
以下のように在学中の学業成績が悪い場合、支給対象外となる可能性があります。
- 修業年限で卒業・修了できない場合
- 修得単位数の合計が標準単位数の5割以下
- 授業への出席率が5割以下など、学修意欲が著しく低い場合
ただし災害や傷病などのやむを得ない事由があれば、上記に該当しても支給される可能性があります。
収入と資産の基準
給付型奨学金を受け取るには「世帯収入や資産が一定以下」でなければなりません。
これは本人や父母、その他の生計維持者(おじおばや祖父母など)の「収入」や「資産」についての基準です。
【収入基準】
収入が「給与」の場合、収入額の上限の目安は以下の表の通りです。
家族の人数や構成 | 上限額まで給付される年収の目安 | 上限額の2/3まで給付される年収の目安 | 上限額の1/3まで給付される年収の目安 | |
---|---|---|---|---|
両親が揃っていて一方の親が無収入 | 子どもが1人 | 約220万円 | 約300万円 | 約380万円 |
両親が揃っていて一方の親が無収入 | 子どもが2人(本人・中学生) | 約270万円 | 約300万円 | 約380万円 |
両親が揃っていて一方の親が無収入 | 子どもが3人(本人・高校生・中学生) | 約320万円 | 約370万円 | 約 430万円 |
両親が揃っていて一方の親が無収入 | 子どもが3人(本人・大学生・中学生) | 約320万円 | 約400万円 | 約 460万円 |
ひとり親世帯(母のみが生計維持者の場合) | 子どもが1人(本人) | 約210万円 | 約300万円 | 約370万円 |
ひとり親世帯(母のみが生計維持者の場合) | 子どもが2人(本人・高校生) | 約270万円 | 約360万円 | 約 430万円 |
ひとり親世帯(母のみが生計維持者の場合) | 子どもが3人(本人・高校生・中学生) | 約270万円 | 約360万円 | 約 430万円 |
ひとり親世帯(母のみが生計維持者の場合) | 子どもが3人(本人・大学生・中学生) | 約290万円 | 約390万円 | 約 460万円 |
以下の「進学資金シミュレーター」を使えば収入基準に該当するかがだいたいわかるので、調べてみてください。
【資産基準】
本人と生計維持者の資産合計が2,000万円未満(生計維持者が1人の場合1,250万円未満)であることが条件となります。
資産には現金や投資用の株式、金銀等が含まれ、土地や建物などの不動産は含まれません。
家計急変による給付奨学金
大学等に進学していても、以下のように予測不可能な事情で家計が急変してしまったケース、緊急に支援が必要なケースでは給付奨学金の支給対象になる可能性があります。
- 親が亡くなった
- 事故に遭った
- 病気になった
- 災害に遭った
給付型奨学金の申請方法
必要書類
- 給付奨学金確認書(兼同意書)
- マイナンバー提出書類
上記のほか、外国人の場合には在留資格及び在留期間が明記されている証明書が必要です。
収入証明書や特別控除証明書類を要するケース、高校ではない施設に在籍していた場合には施設等在籍証明書が必要になるケースなどもあるので、具体的には個別に日本学生支援機構や大学に確認してみてください。
申し込み方法、手順
申込
まずは在籍中の大学から給付型奨学金申請用の書類を受け取り、必要事項に記入して大学に提出します。
またインターネット(スカラネット)から日本学生支援機構へ申込みを行う必要があります。
このとき、「申込みの期限」も確認しましょう。
マイナンバーを提出
マイナンバー関係資料は大学を通さず、直接日本学生支援機構へ郵送する必要があります。
大学から交付された書類の中に封筒が入っているので簡易書留で送付しましょう。
大学による推薦
大学が提出書類と本人の成績や学修意欲を確認し、奨学生として日本学生支援機構へ推薦します。
審査と選考結果通知
日本学生支援機構で審査が行われ、大学を通じて選考結果が通知されます。
採用されると奨学金の支給が開始し、指定した金融機関へお金が振り込まれるようになります。
まとめ
今、大学などに在学中でも給付型奨学金を受けられる可能性があります。
まずは一度進学資金シミュレーターを使い、家計の条件を満たすかどうか確認してみましょう。
受けられる可能性がありそうなら大学に相談をして申請手続きを進めてみてください。