事例に学ぶアイデア商品の発想法と特許戦略・ビジネスモデル

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大ヒットしたアイデア商品はどんなひらめき、きっかけ、アイデア、試行錯誤から生まれたのでしょうか?また、どんな特許戦略やビジネスモデルで利益を出しているのでしょうか?

新規事業や起業にも役だつアイデアの発想法と特許戦略・ビジネスモデルを事例から学びます。

 

発明?開発?大ヒットしたアイデア商品4つ

今回の記事では4つの大ヒットしたアイデア商品について、その発想のきっかけや特許戦略・ビジネスモデルについてまとめました。

  1. ダンシングストーン
  2. のりかえ便利マップ
  3. エンゲルス(コイン・カウンター)
  4. マジックカット

それぞれについて詳しく解説してます。

宝石が揺れてキラキラ光る!ダンシングストーン

ダンシングストーンとはネックレスなどにつけられた宝石が、何もしていないのに踊るように振動してキラキラと美しく光り輝くジュエリーです。考案開発したのはジュエリーの製造販売を行うクロスフォー社。世界的に大ヒットしています。

ダンシングストーンの仕組み

ダンシングストーンは、中石と呼ばれる宝石を丸い輪っかで外枠にぶら下げている構造になっています。そのため、外枠が揺れると自然に中石も揺れることになります。しかし、外枠をあえて揺らさなくても中石が揺れ続けるのがダンシングストーンの特徴なのです。

クロスフォー社は、人間のわずかな動きを細かな振動エネルギーに変えて(あなたの胸で 動き(輝き)出したら 止まらない)、と言えるほど常に動き続ける宝石の『Dancing Stone ®』を発明しました。ジュエリー本体は動かず、その中にある石だけが振動するのは、この『Dancing Stone ®』がはじめてです。
クロスフォー社ホームページより http://www.crossfor.com/collection/twinkle.html

ダンシングストーンは、中石と外枠を繋ぐ丸い輪っかの内側をかなり細くしています。このため、空気の揺れや心臓の動きなどかすかな体の動きでも外枠に伝わり中石が振動するのです。一度揺れ始めた中石は止まることなく揺れ続けます。

ダンシングストーンのアイデアと特許戦略・ビジネスモデル

ダンシングストーンはなかなか画期的なアイデアに思えますが、どのように考案されたのでしょうか。

ダンシングストーンのアイデア

ダンシングストーンを考案開発したクロスフォー社の土橋秀位さんはテレビ番組の取材に「ずっと振動するように石が動いていたらキラキラ光り輝く。それを実現するためにどうしたらよいか真剣に考えていたらこんな形で実現した。」と語っています。

商品としての課題の「キラキラ光らせる」ということに対し始めから「揺らせる」という解決方法を考えたと語っておられましたが、何もないところからアイデアを発想したというよりはもともとジュエリーを揺らすということに、何かヒントとなるようなものがあったのかもしれないですね。

ダンシングストーンの特許戦略・ビジネスモデル

ダンシングストーンは国内・海外で特許を取得し模倣に備えていますが、「自然に揺らせる」技術についての特許ではないようです。特許の取得状況については詳しく解説しているブログがありましたのでご紹介します。
知財アナリストのひとりごと「クロスフォーさんのダンシングストーン

現在、ダンシングストーンは国内・海外で特許を取得し、ジュエリーメーカーにライセンシングしています。ライセンス料は4ドル/個で毎月2億円の収入があるそうです。うまく特許のライセンシングを活用した事例ですね。はっきりとした売上比率は分かりませんが、ライセンシング収入が大きな割合を占めていると思われます。

主婦の発明から生まれた!のりかえ便利マップ

都内の方にはおなじみの「のりかえ便利マップ」。福井泰代さんという主婦が発明したものですが、どんなきっかけで生まれて展開していったかをまとめました。

のりかえ便利マップの仕組み

のりかえ便利マップは、「何両目に乗れば階段やエスカレーターに 近いかひとめでわかる」ポスターです。路線の進行方向と号車番号から、ユーザーは目的地の場所に近い車両に乗り込むことができます。

のりかえ便利マップのアイデアと特許戦略・ビジネスモデル

今や都内の地下鉄では必須とも言えるのりかえ便利マップですが、どのようにこのアイデアは生まれたのでしょうか。

のりかえ便利マップのアイデア

のりかえ便利マップは、ナビット代表の福井泰代さんが夏に1歳のこどもと一緒に駅で困った体験がキッカケになりました。ベビーカーにこどもを乗せていたので、エスカレーターやエレベーターを探したのですが、どこにあるのか駅に表示がなくてホームを行ったり来たりしながら探したそうです。

結局最終的には見つかりましたが最初とは真逆の方向だったため、ホームの端まで行った後にまた逆の端まで戻ることになり、暑さでこどもがぐったりするなど大変な目にあったそうです。その時、出口やエスカレーターの場所が分かれば便利なのにと思い、のりかえ便利マップのアイデアが生まれました。

ユーザーの現状の不便さを課題と捉えて、課題を解決するアプローチでアイデアを発想したということですね。

のりかえ便利マップの特許戦略・ビジネスモデル

のりかえ便利マップ自体は、最初は本形式での出版を検討したそうです。しかし、出版社に相手にされなかったことに加え、特許を取るのが難しく「真似されないためにはどうすればいいだろう?」と考え、「駅に貼られていたら真似されないだろう」と思い、営団地下鉄(東京メトロ)に営業にいったそうです。何度も門前払いを繰り返しますが努力が実りまず「銀座線」で採用になりその後全線で導入、都営線などでも採用されます。

のりかえ便利マップ自体のビジネスモデルは、ポスターとして売り切り型のビジネスモデルと思いますが、株式会社ナビット(福井泰代さんが設立した会社)は、のりかえ便利マップを足がかりに以下のような様々なビジネスを展開していきます。

  • 紙媒体としてののりかえ便利マップを活かしたノベルティ作成事業
  • のりかえ便利マップのコンテンツ作成ノウハウを活かしたWEBコンテンツ作成事業
  • 路線調査に大量の調査員が必要になったことを活かした地域での軽作業代行サービス
  • データベースの作成ノウハウを活かしたデータベースの管理・販売
  • データベース・WEB作成を活用した「毎日特売」などの新規事業

ナビット

売り切り型のビジネスに終わらず培った経験やノウハウを活かした新規事業を次々と開発し、現在も成長を続けています。

コンビニの店長が考案!エンゲルス(コイン・カウンター)

エンゲルスという名称のコイン・カウンターをご存知ですか?小売店や商店ではレジ締めの際には使われるものですね。

エンゲルスの仕組み

エンゲルスはいわゆるコイン・カウンターで、硬貨別に箱に入れていくことで、簡単に残高が分かるようにしたものです。エンゲルスならではの特徴は、プラスチック製のケースに硬貨ごとに溝を作りその中に数字を表示させているため、枚数や合計金額をひと目で読み取れるようになっています。

エンゲルスのアイデアと特許戦略・ビジネスモデル

エンゲルスはどんなきっかけでそのアイデアが生まれたのでしょうか。

エンゲルスのアイデア

エンゲルスは当時24時間営業のコンビニエンスストアの店長をしていた、橘義春さんによって考案されました。コンビニは営業時間の合間に定期的にレジ締めを行い、レジの残高を確認しなければなりませんが、硬貨を数えるのがとても手間だったそうです。

そこで文具店などでコイン・カウンターを探すのですが、コンビニで使えるような安価で簡易に使いやすい商品が世の中に存在しておらず、やむなく自分で商品化しました。もちろん商品化の際には、コンビニでの経験を活かした使い勝手の良い商品を考案したそうです。

エンゲルスのアイデアはニーズを実際に感じていたユーザー視点から生まれたのですね。

エンゲルスの特許戦略・ビジネスモデル

橘さんは1989年にハシ・コーポレーション(現エンゲルス社)を設立し、エンゲルスを本格的に販売していきます。しかし、すぐに模倣品に悩まされることになります。

当時実用新案登録出願中でまだ未登録であったため、不正競争防止法による模造品の製造・販売の差し止めの仮処分を申し立て、これが認められます。その後、実用新案登録も取得します。

エンゲルスは特許は取っていませんが実用新案登録で模倣品への対抗手段をつけ、ライセンシングはせずあくまで自社製造・販売にこだわるビジネスモデルで展開しています。

どこからでも切れる!?マジックカット

マジックカットとは旭化成パックス社の技術で、調味料の小袋や洗剤やシャンプーの詰め替え用袋などに使われている、「端からどこからでも切れる袋」です。誰でも1回は使ったことがあるのではないでしょうか?

マジックカットの仕組み

マジックカットの袋がどこからでも切れるのは「袋の端に沢山の小さい穴」があるため、袋の端を引っ張ることにより穴がつながり簡単に切れるという仕組みです。

マジックカットでは、上の画像のように袋の端に0.5mmの小さな穴を同じ0.5mm間隔で無数に開けています。

マジックカットのアイデアと特許戦略・ビジネスモデル

マジックカットは分かってしまえば単純な仕組みですが、初めて思いつくのは難しそうですね。

マジックカットのアイデア

マジックカットのアイデアは旭化成パックス社の前身である旭化成ポリフレックスの専務から生み出されたそうです。きっかけとなった体験は「出張から帰ってくる新幹線の中でイカの燻製をつまみにビールを飲もうとしたところ、イカの燻製の袋がうまく切れずに開けることができず、つまみなしでビールを飲まざるをえなかった」ということだったようです。

誰でもありそうな体験ですが、そこから「小さい力で簡単に開ける袋はできないか」と自社の技術スタッフに命じたとのことで、そこはやはりビジネスマンですね。

マジックカットのアイデアは、ユーザーとしての体験から不便さに気付いたことから生まれたのですね。

マジックカットの特許戦略・ビジネスモデル

開発のアイデアはあったものの実現はなかなか難しく「袋の端に薬品を塗布する」「光線で処理する」「切れ込みを沢山入れる」などの試行錯誤を繰り返し、現在の方法で特許を取得することになります。

自社だけの販売力に限界を感じて積極的にライセンシングを行い、現在では8割型の商品は他社によるライセンス生産・販売になり、全国で数百億円規模の販売額だということです。

ビジネスモデルを自社のみの製造販売にこだわらなかったことが成功要因の1つと言えるでしょう。

まとめ

今回は大ヒットしたアイデア商品の事例から、アイデアの発想法と特許戦略・ビジネスモデルをまとめました。

  1. ダンシングストーン
  2. のりかえ便利マップ
  3. エンゲルス(コイン・カウンター)
  4. マジックカット

についてまとめています。

アイデアについては、基本的にはユーザーの不便さやニーズを課題ととらえ解決するという方法で発想しています。特許戦略・ビジネスモデルについては、状況に合わせた様々な方法が取られています。

ビジネスに関心のある全ての人に有用な記事になれば幸いです。

 


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